ここに、彼は死に場所を求めてやってきた。
 人ではないものとの戦いは望むものではない、仮に打倒できたとして誰がその姿を覚えてくれるというのか。
 その主は、誰の目にも焼きついて見事だったというのに。
 ならばその副官として、その元に逝くためには同様に誰かの目に留まらなければならない。同じ誇りを持って逝かなければならない。
 おおよそに目を通し、誰が一番の強さを誇るか検索した。
 魔術師の少年少女を捕まえる気はなかった。敵討など真っ平だった。それを望まれていない、主は見事に果て満足だったのだから。
 そうして目に留まったのは、この男。
 ゼム・リード。
 名前なんて知らない、その腕を認めただけ。
 ただ、それとの戦いで結果を残せればそれでよかった。
 今一度言おう。彼はここに、死に場所を求めに来た。
 ゼムならば、互いに打ち果てる事さえ可能と見たのだ。

「そんなのは、絶対にごめんだね。誰が、ただの死にたがり相手に構ってやれるかよ!」

『……ただの一言も、そんな事は言っていないのですが』

「目は口ほどに物を言うというが、戦場にいる者は目ではなく腕のようだ。アンタの一太刀一太刀から、しっかり声が聞こえてくるさ」

『では。しかと付き合ってもらいます。断るというのなら、そうですね。あの機体など、なかなかいい動きをします』

 そう言って顔を動かした先には、副座式の型違い。
 どうしてこんなのと、と嘆きながら戦う元学生。

「第一印象どおり、えげつないやつだな。いいだろう、最後まで踊りとおしてやるぞ!」

『ぜひともよろしくお願いします。出来るなら、ハードコア・パンクでお願いします』

「まったく。出来るならご婦人と素敵なワルツを踊りたかったね」