そんな悪鬼羅刹を前に、二つの場違いがいた。
 OSにまぎれ、しかし明らかに小さな人影。二つの、少女。

「私の娘たちだ」

 その有様は、現代で言うショウの『イクシアス』ではなかったか。しかし、なんて不安定。
 当然の事ながら。OSもろとも粉砕された。薙ぎ払う尾の前にまずは一人、同様に動いた腕の前に最後の一人。『イクシアス』は失われた過去の技術、アンノウン。魔術師と機械の融合という禁忌。そのどちらかが欠けて、両立などできるわけもない。
 その少女たちは魔術師ではなかった。それは『イクシアス』の紛い物。
 黒竜王の凶荒は続いていく。少女の涙は枯れる事を知らない。
 新年明けましておめでとうございます、そう言える時間になった時。その星は死んでいた。
 このDVDディスクは研究成果の保管のために撮影していた映像と、バルザック本人の記憶から取り出した映像を混合したもの。故にこれは真実。
 何一つ誇張のない過去の現実。
 何より、人の心境が伝わるショウの前に偽りなど利かない。
 故に現実。過去の現実、過去の真実。
 レナと名づけた少女の、昔の姿。