ＥＸＣＡＳ

　少女はひたすらに泣き続けている。止めようと近づく警備員は切り裂く臓物をぶちまけ、逃げ出す研究員は頭から潰され挽き肉にされた。少女はただ泣き続け、黒竜王の頭上に載せられた事にも気づかない。
　OSと呼ばれる機体がそれを落としに来た。泣いている少女には気づかない。さながら象を前にした蟻。その足の裏を噛み千切り死に至らしめる事さえ出来ずに、たった一つも傷をつける事さえ出来ずに散っていく。
　ある一家に降り立った。新年を待ち望んでいた一家は、悲鳴もなく火の海に付した。
　邪魔な機体が神社の上空から狙撃してくる。実に効率よく、黒竜王はその場所ごとすべてを吹き飛ばした。
　初日の出は、紅く輝く炎の塊。
　振り下ろす爪は勢い余って大地を抉り、民家などいくつ巻き込み微細な血液が付着したかなど気にも留めない。遠くはその眼力から飛ぶ光線の前に、重要施設もろとも一つの地区を灰にした。
　一つ歩くたびに住人が死に、
　一つ動くたびに百人が死に、
　一つ戦うたび千人が死んだ。
　その光景、地獄と呼ばずなんといおう。