その研究成果を知りたいと押しかけたバルザックの前には、魔術師の少女。流石に最高と歌われた片割れであるだけに、その研究を彼同様に理解するのに時間は要らない。
 だが、どういうわけか。最高の実験素材があるに関わらず彼はそれをしようとしていなかった。
 業を煮やしたわけではない、ただこれからの時代のためにと少女には犠牲になってもらっただけの事。
 以来、毎日のように父親はやってきて娘を返せと訴えてきた。
 一ヶ月毎日、殴られ地に這わされようと決して諦めた事はない。このバルザックでさえ、あるものを捨てたというのに父親は捨てようともせずその場にとどまった。
 常日頃から考えていた事が、ついこの日に爆発しただけの事。
 新たな年を迎える、雪が降り積もった深夜の事。
 除夜の鐘ではなく。一回きりの銃声が到来を告げた。
 それが発端。少女は目覚め、ありえないと誰かが騒ぐ中で黒竜王が光臨した。