そこには雨が降っていた。鋼鉄の雨、銃弾の雨。痛い痛いと泣く事はない、痛い痛いと怒るものばかり。反撃は基本的に十倍返し、まるで子供ではあるが決して折れやすい心ではない。

「ケルベロス、目的地まであとどれくらいだ?」

 ブリッジに手を添えながら、あらゆる攻撃から彼女たちを守りながらゼムは言う。今この状況の中で、最高の指揮官はメディア大尉だけだった。そして、その補佐としてエースとして、兵士を引っ張るリーダーはこのゼムだった。

『もうじき視認できるはずです。黒竜王が抉じ開けた、動力部への直通通路』

「あれには感謝しなければな。敵軍勢の半数は受け持ってくれている」

『それでもかなりの数がここに集中しています。頼れるものは自分だけ、最後まで諦めてはいけませんよ』

「何を言っている。頼れる戦友なら、数え切れないほどここにいる。諦める要素が、何処にあるんだい?」

『これは失言。……目的地、発見』

「……なるほど、あれか」

 焦げた大穴。戦艦一隻が入りきるほど大きく、その前にはまた、数え切れないほどの大軍が群がっていた。
 死闘はまだ続く。激戦の幕は二度と引く事はない。ノンストップでリピートはなし、指揮者は台を下り奏者だけで気ままに演じる。そのなんと荒々しく無様なまでに美しいのか。悲観はなく、誰もが生き残るという一心で進んでいく。