「カカカ。良くぞ来たと、最後の敵はそう言うのだろうが、フライングのし過ぎではないか。戦争は、まだ終わってすらいないというのに」

「それを終わらせるためにここまで来た。バルザック、ここで死んでもらう。せめて、お前が何も出来ないように」

「反抗組織の輩が、この惑星を爆破する目での間、か。果たしてそれが可能かな。守護者を残そうと、犠牲は山ほど出るというのに」

「わかっている。そして、幕を引くのは俺たちであってはいけないんだ。だから、託すしかないだろう」

「歴史の流れに準じ、表舞台には決して立たないと。ご立派な事ではあるな」

「あんたは永遠に名前を刻み付けるだろうが、俺は海の見える星で静かに一生を終えたいんだ」

「平凡な。それがお前の夢だというのか」

「夢を見る事はいけない事なのか? 愛しい人が傍にいて、愛しい子供に囲まれて、その一生を誇れるように逝けたのなら。何物にも勝る至福だと思うのだが」

「まさしく。その通りだと思おう」

 意外な返答に、その目を見開いて驚いた。目前にいる怪異が、まさかそんな平凡を認めるというのだから。

「私とてそれを夢に見た。だが、悲しいかな。この身は人の前に一介の科学者だ。君が人である前に、一介の魔術師であるように」

「……それは、」

「だから平凡から逃げ、更なる発展を求めた。君の言う愛しい者たちのために、よりよく過ごしてほしいために。それが、惨劇の第一歩だった」

 視線が、ついにショウから外れた。それを焦がれていた、ついにそれを前に罵る事が出来る事を。

「お前が、すべてをぶち壊し」

「止めろ」

 制した。その暴言を、自分の大切な者を汚し壊そうとする暴言を。