光の粒子が刀身を変えていく。二倍、三倍、その肢体よりも大きく雄々しく剣は姿を変えた。翠の光、蒼い光、紅い光、金の光、七色の虹の光が彼らの意思に答えていく。
 それは空間に作用する魔術。誰かを断つのではなく、空間を断ち切る魔術。断叉術式が、起動する。
 周囲の闇を歪めて歪めて、交わる瞬間にすべてを歪める。
 原理は実に簡単。ただその目的地まで往く事を確実にしただけ。安全などとはいえない、障害物があるにも関わらずそれさえも飛び越えていこうというのだから。右の剣に重力を、左の剣に重力を。互いに尋常ではないそれらが交わって、つまり重力に重力を加えて、強力な重力場によって空間が歪む。その現象を、人はこう言う。

『『ブラックホール!?』』

 迷う事はない、安全などない。それでも飛び込むしかないのだと、彼らは心に決めていた。
 だから言ってくると、小さく彼らに手を振った。
 さよならの言葉ではなく、必ず帰ってくるという意味を込めて。
 明るい天使が黒に飲み込まれ、虹色の箒星が飛んでいく。惑星に当たった瞬間、それは波紋となって掻き消えてしまった。
 誰かがその名前を呼んだ。少年の名前を。
 漠然と、二度と会えないのだと悟ったから。