手を取り合う事は出来なかった。
 一人はその中にいて、一人はその身体になっているのだから。
 けれど確かな温もりを感じる、互いの手のひらに相手の温もりを。それはこんなにも嬉しいんだと、こんなにも認めてくれる人がいる事が嬉しい。

『おかしいよ、ショウさん。今は、戦わなくちゃいけない時だっていうのに』

「そうだな。なんて、いけない娘なんだろう。でも、きっと許されるよ」

『……うん、涙が、止まらない。でも、きっと許してくれる』

 神眼による相手のデータ解析、それをより具体的に分析・変換される。
 よりわかりやすく、より伝わりやすいように。黒竜王の咆哮が、その終了結果。とたんに、あらゆる機体のモニターに地図が広がった。敵本体の、内部地図。説明がついていた、ショウが見てきた事のすべてを正確に。例の砲撃を止めるための動力部=この惑星の動力部だという結果。全軍で、そこまで攻めろという事。
 困惑と驚愕の前に、たった一文だけ添えられていた。
 何の飾り気も無く、知る人ならば彼らしいと笑う一文。
 ――これ以上の犠牲は悲しくなる。
 絶対に死なないでくれ――

 その文はみなに伝わっただろう。なぜか、この戦場に満ちた人々の気持ちが、ショウには手に取るようにわかる。だから、彼らの言葉に嘘偽りがない事を、レナ以上に喜んでいるに違いない。
 そのために言う、この人たちにこれ以上犠牲を出してほしくはないと。

「行こう、レナ。先に、俺たちですべてを、終わらせたい」

『仰せのままに。わたしは、貴方のために生きていきます。絶対に、諦めない』