こんなに暖かな気持ちを、一体いくつ感じただろう。
 この人と一緒に過ごして、一体何度嬉しいと感じられただろう。
 答えはない、彼と同じように、そのどれもが掛け替えのないものだったから。長い事の眠りで、長い事の畏怖があり、そのすべてではなく少女として見ていてくれた事が、少女としてのときを過ごせた事が嬉しかった。
 だから、もう一度その証がほしい。
 一度得た答えを、もう一度その口から言ってもらいたい。
 ――わたしが、この世界に生きる事を、許してくれますか。
 ――当たり前だ。その隣には、きっと俺がいる。
 静寂が終わる。鳶の鳴き声を思わせる剣戟を、その世界で誰もが耳にしただろう。
 白い天使が、黄金の剣を持って光臨した。
 赤白の鎧と、蒼翠の瞳、六枚の翼は大天使の証明。敗北した武人を見下しはせず、目もあわせず、ただ告げる。

「これが、俺の生きる証。そう信じて、アンタの屍を越えていく」

『…………では、地獄の門より見させてもらおうか。その道が、一体どこまで続くのかと、な』

 苦しそうな素振りは見せず、最後にスピーカーいっぱいの笑い声を聞いた。嘲笑ではない、二人の門出を祝う純粋な楽しみから来るもの。
 宇宙に、一つの武将が散った。
 盛大な花となって、一瞬だけ咲き誇る。