『――さあ、どうした。戦争を始めないか』

 感情が露出した声だった。
 愉快愉悦、ここで苦しむ二人をそう見下していた。
 動く者は誰もない、動く意志を持つ者は誰もない。ここに、戦意を持っている者は誰一人として存在しない。敵も味方も、この非情な現実を直視すれば。
 嘲笑はまだ続く。周囲に自らを戒める他者がいない今、それは鎖を解かれた獣の如く。押さえつけられていた感情は膨らんでいく風船。黒い風が充満し、その一部が苛むための破壊。常識を逸脱し、あらゆる柵を崩しきったが故の蛮行。何一つ後を考えないそれは、最後と決めている。ここがすべての最後であると。

「なん、でだ……」

 そう、問いだした。誰かに、何処にいるかもしれない誰かに。
 神という存在がいるのなら、おそらく彼に。
 悪魔という存在がいるのなら、おそらく彼に。