ショウが取った物は観客が頼んだ物だけで構成されていた。無理難題を吹っかけた客もいただろう、しかし難なく一発で彼は取って見せた。
 基本的な運動能力は年代の平均より少し高めで、何か特異な能力を使える人間ではない。銃の扱いは得意だが、それでこの成績はどういう事だ。詳しくわかるはずがない。何かを賭けると強くなる人間なのだ。大人になり金銭物品を賭けたなら、それだけで食っていける。天職はギャンブラーだ、と以前笑っていた。
「二人とも、暗い顔してないで次に行こう。休憩時間が終わっちゃう」
「時間は無限じゃないんだ、負けを認めろ」
「いちいち余計な事言うな」
「まあ。だが忘れる前に払え」
「……何の事だっけ?」
「今日の昼飯、奢ってもらおう。そこのお好み焼きで構わん」
「ゲッ。あそこ美味しいって評判で、高いヤツじゃないか」
「ついでに私もヨロシク。昨日はちょうど売り切れで食べられなかったの」
「お前は賭けをしてないだろうがっ」
「ショウ君が勝つ方に賭けていた」
 賭け事で負けた手前、分の悪い事はせずに負けを認める二人だった。
 さながら肉汁滴る晩餐に群がるハイエナ。とにかく魔窟と化したお好み焼き売り場に二人の勇者は特攻を掛けた。