その場に座り続けているにもかかわらず、思考は暗い道を駆け巡っていた。
 それはまるで迷路、ところどころ壊れて火を噴き、油断すればいつと鳴りの壁が崩れるかわからない。そんな危険を冒してでも、その先には行く価値がある。
 奥に眠るは古代の宝、稀少の財宝、いまの望みを叶えてくれる夢のような宝物。
 それを手中に、再び収めるために。
 自ら作り上げた迷路を駆ける、把握し尽くした回廊を迷走せずに突き進む。

 彼が作り、彼が望んだ物がそこに、あった。

「さあ、クライマックスといこうか……」

 陰惨な笑みだった。翳りを含んだ、欠けた月のように醜い笑顔。
 広すぎる宇宙に浮かんだそれは、醜悪さよりも不気味さのほうが強かった。
 強大な宝を持ち出して、笑い声が迷路に木霊する。