虹色の膜が展開された。
 とてつもなく頼りなく、儚く、しかし実体のない物を拒絶する最高の砦。
 年代を重ねるごとに近代化を重宝し、螺子の一本まで最新を求め続けた人間は原始を忘れる。始まりの形を棄て続けたがために、こうしてこの場で苦を味わっている。
 同時に、進化をするのが人間でもある。
 一が駄目なら二を求める、出来ない事は可能にすればいい。
 虹と翠が遭い交わった。
 触れ合う瞬間に黒く、紅く、碧く、様々な色と奇怪を産む。
 故に、どちらかが消え去るは必然。巻き込まれ融け呑み込まれる事によって。

 ぐにゃり、と。
 歪にへこむ。

 膜は揺れて、弾はひしゃげて、色は褪せて、濁り失って。

 あるはずがない宇宙で、風船が割れた。

 失われた色が拡散する。
 線香花火の火花となって、星の表面が焼け爛れた。