時を遡る。
 敵の脅威を知り、逃げ惑う事に専念していた頃に。

 全体から見れば、被害はそう多くはない。だが同時に損傷した機体はない。
 何故なら、被害数=撃墜数だから。
 機械のような正確さで弱った敵から優先的に落としていく。その高速でよく狙いが定められると、例えEXCASでも不可能だ。
 最新型は、ここまでレベルが高いのか。消え逝く者さえ、そんな客観的な事を考えてしまった。打開策が見つからない敗戦状態で、それ以外の何を思えばいいのか。
 瞬く間に味方が落ちていく。
 諦めが心を支配し始め、逃走を計る機体がいくつも出てきた。始めはバラバラだが、そんな無能は一番に消えていく。
 やがて幾人かでチームを組み逃走する。そちらへ狙いが集中し、深部の攻撃はやや薄くなる。しかし長く持たない。
 激化する戦場に、先遣隊は四分の一しか残らなかった。
 諦めるなと、中隊副隊長が叫ぶ。
 隊長は既に撃墜されてしまっていた。彼の物言いも、絶望感に拍車を掛けるだけ。
 この状況で、一体何を諦めるなと言うのだろう。
 無傷に犠牲者なしという敵と、頭角は死に、大多数の友を失った彼ら。
 そんな時。