『……ケルベロス、……大尉、きこ、ますか?』

「っ! ええ、聞こえますよ! こちらはケルベロス艦長メディア・スタッド大尉です!」

『……かった。こちら、隊。現在、中、……を願いし』

「了解です! 何とか持ち堪えてください」
「大尉、何を話しているのだね! 勝手な判断は慎め、指揮は私が執っているのだ」
「では中佐、急いで次の部隊を発進させてください。交戦中の部隊を援護します」
「何を言っているのだ。先遣隊は全滅だ、今は様子を見るべきだ」
「その先遣隊の一員から、援軍要請があったのです。戦況は、三対七」
「……あの短時間で、そんなやり取りをしたというのか。だが、信じていいのか」
「もちろんです。このクビと、命を賭けて」
「そこまで言うのなら、信じよう。出撃しろ!」

 メディアは嘘を吐いた。
 命を賭けるという科白の中に、それはない。
 あったのはもっと、具体的に物事を語った部分。

 援軍要請、それ自体に嘘はない。
 だがその規模など、あんなに聞き取りづらい状況で分かるはずがない。口から出任せ、小細工を弄しても無駄だろうという彼女の独断だ。
 戦況も、もちろん聞き取れていない。ただ、そうであろうという自信に満ちた彼女の声を聞き、希望を混ぜながら科白にした。

 その声の主を。
 命令違反をして飛び出したいくつかの部隊を。
 戦場で戦う若者たちを。

 零七小隊の面々に、幸があらん事を。
 心からメディアは祈った。