半刻と時が経ち、祈るような気持ちで全員沈黙を保っていた。
 流れるノイズに耳を傾け、何一つ新しい命令を下す事なく。容易く出撃しろなどと、保身を考えるクレスが言えるわけもなかった。
 全うな精神の持ち主ならば出来るのかと言われれば、おそらく無理だろう。
 交戦宙域に入ってから十分と待たず、おそらく全滅しただろう現実を前に。

 指示を、定期的に誰かが言う。
 蚊が泣いたほどの声量で、それこそ耳鳴り程度にしか思えない。

 どれほどの地獄絵図が繰り広げられているのだろう。
 どれほどの呪いを吐き棄てられたのだろう。
 この回線が繋がる時、それは間違いなく恐怖の宴が始まる。
 降伏勧告か、それとも宣戦布告か。
 まず間違いなく、先発隊は全滅したと、口にせずとも思いは一緒だ。




 唐突に、ノイズが掻き分けられた。
 聞き慣れない声が、そこから流れた。