「――――!!」
 現実に車は爆ぜた。強大な特別材質の建造物に真正面からぶつかって。
 その間、ただの一度もブレーキは踏まれなかった。
 何故止めなかった。
 その疑問が湧く頃には、すべてが手遅れだった。
 加速していた車を止めるために、仮に手を出し受け止めたところで生じる衝撃によって受ける被害は尋常ではない。
 何より、ピンチに追い込めとは言われながら救い出せる状況を作れと言われた。
 どう転ぼうとも危険を生むあの状況で、傍観以外に手があっただろうか。
 車に乗って、リミッターが外れた逃走を許した事で、彼らの敗北は決していた。そう、
「すみません、隊長。対象の、」
『何をしている、目標が現れた! こっちを手伝え!』
「えっ……?」
『例の少年を連れている! 急げ!』
 車で逃げたと、騙されたために。