黒くて昏いカーテンが広がっていた。揺らめいて、時折内包された星の輝きが見えた。鉄色がするはずのそれに、見事な青龍の絵が描かれていた。大きく、立派な、思わず眼を奪われる。こんな物が本当に在るのかと、その巨大な人工星に。
 土星を思わせるリングが四つ、煌びやかな光に点々と灯されながら廻っている。
 鉄の塊にあるべく継ぎ接ぎはどこにも見えない、その事が余計に天然の物という発想に拍車を掛けている。

 言葉で言われたよりも、実物を見て恐ろしさを体感した。
 敵の主力は艦隊ではなく艦載機、これ一杯にステーション並みの人口でパイロットがいるとしよう、これ一杯に機体が詰まっているとしよう。
 なんて数、なんて絶望。
 震え上がる事に無理もない。

『これが、敵の本星か』

 それは、戦を前にした戦士たちの武者震い。

『全機戦闘態勢、安全装置を外せ。でかい花火を打ち上げるぞ!』
『「……了解!」』

 それは、無知なる者たちの言い知れない恐怖感。

 全機一斉に銃口を向け、トリガーを引いた。
 翠の光線が数十束、黒光りする球体を焼き尽くす。はずだった。