奇襲で先手を打ち、敵母星に決定的な打撃を与える。
 ちまちました攻撃などせず、速攻で勝負をつけろと。
 そのための先駆け。本隊の到着と同時に最後の総攻撃、一日時間ですべてを終わらせろと言うのだ。

 しかし、これは如何にも無謀。
 何せ、相手本星の具体的な戦力も知れていない。

 レーダーで座標と規模は確認できただろう、だが無人偵察機を飛ばしても撃墜されてしまう。カメラに収める間もなく、とてつもない遠距離から。
 そのため、こういう策しか取れなかった。近付きすぎれば、その謎の攻撃で狙い撃ちされる。先手を打つなら、狙い撃ちされても確実に到達できる物量で攻めるしかない。
 これならばやられない、と言う実力を持った部隊で構成。
 中佐の階級は伊達ではないようで、今出せる中で最善と思える策だろう。そう、思えるだけだった。

「しかし退屈だった。演説なんてものは聞くものじゃない」
『リズ、よく眠ってられたな。あの中佐の演説の前で』
「眠かったから仕方がない。第一、これから永眠するわけでもないんだ、別にいいだろう」
『貴様ら縁起でもない事を言うな、担ぐならいい物にしろ。伍長、一丁かましてやれ』
『了解です。――汝ら病める時も健やかな時も、必勝を信じて戦い抜く事を誓いなさい。それが勝利の第一歩なり』
『アーメン、牧師……』
『「アーメン」』

 その後は静寂だった。
 僅かに見えた人工物に、すべての言の葉を奪われてしまった。