どれ程の時が、外の世界で流れただろう。

 そこは、夢の中。
 短くも長い、深くて浅い、黄昏の海を挟んで人影が舞い降りた。

 温かな珈琲が注がれかカップを持ち、題も著者も書かれていない白書を読んでいる青年。

 ボロの服に手足が千切れた鎖に繋がれ、虚ろな双眼を持った幼すぎる少女。

 紅いローブと傷だらけの顔、骨より細い身体と闇より深い瞳の老人。

 互いに相容れない時を生き、
 相容れない場所にいるはずが、
 この曖昧な時空に干渉して対面した。

 さて。吾は魔術師。初めましてかな?

 恭しく頭を下げた。敬意の微塵も感じない無礼さを、隠そうともせず。
 それは挑発か。
 否、これがこの人種なのだ。
 この世の終わり、伝説の怪奇、そんな物を見た表情で少女は震えた。
 魔術師、と単語を耳にした途端。