ピタリと動きが止まった。
 硬い理性を再起動させる、たった一言の呪文。

「(最低どころじゃない、最悪な存在だ。俺はクズだな)」

 身体に触れる事はせず、タオルケットだけを掛ける。
 室内の明かりはそのまま、二度とその場から振り返らずに出て行った。

 改めて認識した。
 自分は元の関係に戻れない。

 それ以上に進展する事も許されず、同じ時の流れに相容れもしない。
 そういう道を選択した、それで彼女が生きてくれるのなら。
 慰めるのではなく憎まれる役を買って出た。負の感情しかぶつけられない悲しい役目を。それが何故、あんな行為に走るのか。

 弱かったから。
 心が弱くて、どこかで詩絵瑠に助けを求めていたから。

 好きで憎まれたくはないんです、本当は好きになってもらいたい。隣にいて笑いあえる存在になりたかった。ランサーの代わりに慰められる存在になりたかった、自分も貴方が好きだったから。

 そんな感情が眠っていた。それが、アルコールと色香に触発され暴発した。何て低俗。