即答は出来なかった。
 彼が口にした言葉は覚悟であって、約束ではなかったから。
 未来を縛る約束、それは他の一切の選択肢を消してしまうから。
 だが、迷いなく小指に指を絡めた。

『小さな約束』を交わした。

 細い指から離すと、鶴を渡された。
 小さく雑な、折り紙で作られた一羽の鶴。

「約束。また会ったら、もっと上手なのあげるね」
「楽しみにしているよ。もっと、上手に折れるように、練習しろ」

 回想に浸っていたせいか、手には例の折り紙があった。
 お世辞にも良い出来とは思えない、けれど不思議な暖かさを感じさせる物。