「……おにいちゃん、」
 不安な声が掛けられた。
 子供ほど空気に敏感だと言うが、その通りなのだろうか何も言わない。声をかけただけで、不安そうにしているだけで何もしない。いや、何もではなく確かな事を一つだけしていた。
 背負っている少年を信じている。信じるという不確かで、何よりも支えになる事を、この少女はショウに委ねていた。
 その事に気づいたか少年。今までになく、思考が廻る。
「……なあ、少女」
 口調が戻っていた。強気な、同年代に向けるそれは自信。
 僅かに少女から見えた横顔は、ひどく陰惨で楽しげ。
 悪戯を思いついた子供のような。
「一つ、楽しい劇を見せてやるよ」