「……やっちゃった」

 照れながら、そう鮮やかに微笑んだ瞬間だった。
 音を立てて顔が深紅に染まる。高熱で魘されてしまわないか、心配するほど。
 だが流石はショウというべきか、目に見えて挙動不審な行動を取って逃げようとはしない。
 紅さは隠せず、次の言葉を続けようとするレナを、ただ待った。

「貴方を独りにしません。
 でもいつか、その心から恐怖を取り除きたい。
 その時、返事を返してください」

 太陽のように明るく、
 けれど目に優しいその微笑みはまるで月。
 夏の暑さはなく、
 冬の寒さもなく、
 春や秋の涼しい風。
 流れる歌の声が耳に好い。
 幻想は届かないから美しい、しかし届く美しさがそこに在る。
 触れれば壊れてそうな、確かに在ると言い切る宝石。

 少女レナ。
 EXCASでもなく、今まで過ごしてきた彼女でもなく。
 レナという名前の、隣をいると言った存在が、そこにいた。
 そういう存在と、その眼で見ていた。