「言ったでしょう。貴方は、もう独りじゃない。
 いつまでも。
 決して、独りにしないから」

「っ、よく、そんな恥ずかしい事を言えるな、君は。
 俺に、一体何を期待しているんだ!」

「期待なんて、そんな不確かなものは信じません。
 わたしは、そうね……」

 隠した腕が持ち上げられた。
 真っ赤になった顔を隠すように、目を合わせられず瞳は閉じていた。

 その事を不可思議に思い、僅かに瞼が世界を覗く。
 しかし、すぐに覆い隠された。

 温かく、
 柔らかな、
 そんな感触が伝わってくる。

 呼吸を取り込む大きな口から。
 翡翠の双眸が閉じられて。

 既に思考は機能停止。
 どのくらい長く、今度は考え動かなかっただろう。

 紅く上気した頬が遠ざかるまでか、温かさと柔らかさが離れた唇の感触に戸惑った時か、それとも。