コツ、コツ。

 堅く暗い床をレナが歩く。
 ショウという空間に、言葉の松明を灯すため。

 最後。
 青桃色の空に桜が舞った樹は一本も生えていない、空から花びらが舞っている。
 春を告げるには寂しすぎる、どこか怯えを抱えた春。

「本当に、独りじゃないのかな。
 とても、怖い。
 でも、独りじゃなくて、いいのかな?」

「怖いのなら、克服すればいい。
 信じられないなら、信じられるまで確かめればいい。
 何度でも、言うから。
 わたしは、ここにいる。
 貴方の隣に。いつまでも。
 決して、独りにしないから」

 言葉にならない衝動に駆られて、己よりも小さな存在を抱き締めた。