コツ、コツ。

 堅く暗い床を誰かが歩く。
 ショウという空間に、言葉の松明を灯すため。

 四つ。
 風に流れて紅葉が燃える。
 その葉を栄養に、小気味よい風を飲み込んで。
 とくりとくりと、深夜の演奏会を待ち、胸を躍らせる。

「もう。
 怖がるの、やめよう。
 ゆっくりでいいから、春を呼ぼう。
 一歩一歩、四季が巡るから。
 暖かな時の流れに乗って、心に幸せを呼び戻そう」

 瞳が開いて、
 髪が靡いて、
 濡れた舌が僅かに覗く唇。

 その顔に、
 存在に、
 心は奪われていく。
 頑なに拒んだ、その心が。