コツ、コツ。

 堅く暗い床を誰かが歩く。
 ショウという空間に、言葉の松明を灯すため。

 三つ。
 キラキラと降りながら、明かりを消す事のない雪。
 それはどんなに嬉しくて、泣きたいくらいに目に染みる。

「死ぬ事が怖くて、手にした幸せがなくなると怖くて。
 たくさんの恐怖に縛られて生きてきたね。
 御両親を亡くしたその時から、詩絵瑠さんたちに救われたその時から。
 君は、もっと大きな恐怖に震えて隠してきたんだ」

 暖かな色をした唇が紡ぐ。
 その動きを目で追って、動き出した胸が高鳴った。