コツ、コツ。

 堅く暗い床を誰かが歩く。
 ショウという空間に、言葉の松明を灯すため。

 二つ。
 暖かさを纏った夏風が吹き込んだ。
 灯った火を消さず、爽やかに立て起こす。

「君は君を騙しすぎたよ。
 幸せに出来ないんじゃなくて、君がなろうとしないんだ。
 怖いのは死ぬ事よりも、手にした幸せを逃がす事。
 それを、他人に求めてしまえば、なおの事。
 とっても、怖がりなだけだよね」

 銀の髪がさらさらと、好ましい匂いをさせて風に舞う。
 届かない言想は、確かにそこにある現実。
 それはどんなに。