「それ以来、子供は彼らのために生きてきた。この人たちを失いたくないから、友達と同時に恩人だから。明るく笑える世界を与えてくれたから、その世界の住人になれる資格をくれたから。言葉に出来ない、感謝があったから。いつか恩返しをしたかったんだ」

「……恩返しは、出来た。友達に、受けた恩を返せたの?」

「いまね、返している途中なんだよ。精一杯、これから、返していくんだ」

 遠い目をして、かつてないほど穏やかに語る姿は、どこか儚い。
 決して届かない蜃気楼のように、消えてしまいそう。
 もう、戻ってこないのではないかと。

「友達の一人は、既にこの世を去ってしまいました。二度と、恩は返せないのです」

「……っ、それって」