素直に、閉ざした扉を開けられるほど子供は優しくはない。
 見知らぬ者との接触で、どうして殻が壊れるか。
 拒絶は必然、あっさりと彼らは帰された。

 だが幾度も、子供たちはやって来た。
 楽しそうな笑い声と遊びを繰り返して、途中で何度も呼びかけた。
 遊ぼうと、ただ一言告げるだけ。

 断られると引き上げ、次の日にやってくる。
 同じ事を繰り返し、呼びかけ拒絶されまたやってくる。
 群がる蠅のように嫌がる、蝿を好む者がいないようにそれは歓迎されない。
 十を越えたある日、とうとう子供は怒鳴り散らした。
 構わないでくれと、その歳で思いつく限りの罵声を吐き出し投げつけ、二度と関わらるなと追い返した。

 次の日、また子供たちはやって来た。
 笑顔で、一番にこう言った。


 いっしょに遊ぼう。
 外で、いっしょに笑おう。


 殻に亀裂が生じた。あまりにも理解不能で、罵倒する気も拒絶の意思も回らない。
氷河の時代よりも長く凍りついた思考が動き出すより、訪れた春は言葉。舞い散る桜、自然に零れ落ちた。


 どうして、誘ってくれるの?
 一人ぼっちだから?


 明るい、影のない声と笑顔だった。
 優しさはない、純粋だけが充満した存在。
 太陽より暖かなそれは、春の訪れを確かに告げた。