翌日の事、食べなれた病院食を平らげ病室に戻ると、普段から会っている医師が待っていた。いつもとは違った、沈痛な面で。
 どうしたの、と問い出した。
 しかし医師は答えない、その雰囲気と表情が不安を掻き立てた。
 とても嫌な事が、怖い事が起きた。そう、幼いながらも敏感に感じ取っていた。
 自らに関係した取り返しがつかない事ではないのかと。
 泣くほど喚いて、やっと医師は答えた。
 不意に、すべてが闇に包まれたような。


 ――ご両親が、亡くなられた。


 そんな一言で、闇は決して晴れる事がなくなった。
 交通事故だった。退院する子を迎えに行くため、仕事を休んでまで両親揃って迎えに行く途中だった。
 大型のトラックが突っ込んできた、天文学的確立で犯罪者が乗った逃走用の車だった。真横から突っ込まれ両車大破。ガソリンが炎上し、人気がなかった道路で大爆発を起こした。
 遺体は黒こげ、どれが誰だか判別がつかない。