二人しかいない世界には沈黙しかない。
 優しさも冷たさもない沈黙を作り上げるのは、ベンチに座る一人の少年。
 敢えてそれを享受するのは、一人の少女。

 静寂は何物も拒まない、ただし変革を齎すものを拒絶する。
 それを持続させる事、それだけを望む静寂。
 だが、それは内から壊される。
 生み出した、当の本人に。

 たった、始まりを告げる一言によって。

「話をしよう。一人の、親を亡くした子供の話だ」

 それは、遡る事八年前。
 まだ十にもなっていない、子供が独りの舞台に立った時の話。