「だけど冗談の嘘。本気で人を騙す嘘を、彼は吐いた事はないでしょう」
「もちろん、意外な正直者ですから」
「なら、それを信じましょう。あんた達も、彼の友人を名乗るならね」
 悔しげに舌打った。それは彼女達の方が、自分たちの友達をよく理解していたからだった。
 仕方ない、と半ば自棄になったランサーが車から身を乗り出した。
「ショウ、先に行っているぜ! どっちが先につくか、賭けしよう」
「こっちは、もちろん先に着くからね。負けた方が一週間パシリ」
「むう。それは困った。じゃあ、必死になって勝ちに行くさ」
 起き上がろうとするEXCASを目にし、会話を終わらせるため佐伯はアクセルを踏む。加速していく車から、幻聴のようなものをショウは聞いた。
 ――必ず、また生きて会いましょうね――
 亮太の姉の声だった。しかし距離と車の音で聴こえるわけもない。常識から考えてありえないのだが、それでも充分彼の勇気に変換された。
 必ず生き延びるという、勇気に。
 だがどうなる、敵は着実に近付く。この武装は民間人一人を殺すための物ではない。
 装備した実剣は人間大以上あり、他の装備兵装は魔術兵装を除いて対OS用などの大型。これで人間相手に発砲などしたら、それこそ無駄弾だ。では剣で潰すために近づいているのか。それも間違い。これにショウを殺す概念はなかった。センサーは大破、目的を達するための機能はない。
 ならば可能性がある者を捕獲する代償行為は当然ではないか。
 その目論見がショウには読めたのだろう。内心ひどく毒づいた。
「(あれは俺を捕獲するのか。目的なんざ知らないが、捕まってたまるか)」
 銃を構え、矛先を向けようとした、その直後。
 たまたま逸らした視界の隅、希望の架け橋が伸びていた。