「先に行け。仕方ないから、後を追う」
 何を言う、と吐き出す前に、畳み掛ける正論の嵐。
「見ればわかる。すぐに上がれる距離と体勢じゃない、それにあいつはもう復活する。俺なら大丈夫、だけど車となるといい的だ。折角上手くいったんだ、このまま逃げ遂せろ」
「でもさ! ショウを置いていけな」
「ごちゃごちゃ抜かすな亮太! 俺の言う事聞けばいいんだよ、お前は」
「なっ……!?」
「他人に合わせてれば、お前は良い目が見られるんだ。主体性なぞ持つな。それがお前のスタイルなんだからな」
 嫌な表情だった。人を小馬鹿にした、いつもの表情だった。だから、
「行きましょう。私が運転するから」
「姉さん!?」「佐伯さん!?」
「ショウ君の気持ちを無駄にしない。それに、あの子が嘘をついた事あった?」
「それは数え切れないほど」
 何がおかしいのか、詩絵瑠は笑っていた。それは場違いで、ランサーも亮太も頭に血が上った。しかしそれを制したのは、彼の姉だった。