引鉄が引かれる。一度、二度、三度と、全弾尽きるまで。だが悲しいかな。いくら一点集中しようと、何世紀も前の銃器でEXCASは壊せない。確かな狙いでも、装甲に穴をあける事は出来ない。
 これの取り越し苦労に終わっただろう、その対象は脅威ではなかった。
『警告無視により、これより射殺します』
 言って側頭部に備えられた自動小銃が――内部から破裂した。
 衝撃に上体を仰け反り、いくつもエラーが顔面に走った。
 何があったと、模索、理解。不適な笑顔を零す少年に、まさかの仮定は嫌というほど確信させる。先ほどの銃撃が、自動小銃の射出口を塞ぐため。機械から見ての、その正確精密射撃。決して不可能とは言い切れない。
 否、敵の目的から考えればそれは想像に苦しくなかったのだ。あれほどの敵対者を倒せると、誰が思おう。常識と一般論から誰もが不可能だと答える。ならば、それでも先に進むと返答した場合に如何する。
 答えは相手に隙を作る事。
 まさに、これがそうだった。
 エラー処理、
 体勢の立て直し、
 確認が済む頃には車は隣を過ぎ去っていた。