『警告無視は容赦なく処分する。市民の協力を要求する』
 無機質、本当に慈悲もない。目的達成のため、決して被害を惜しまない。そこはまさに蟻の行列だ。覗き見る人間の気分次第で、すべてが踏み潰される。それは子供に似ている。弱者を踏み潰す、至極残酷な事を幼少に行っていた。震えが走らずにいられない。
 弱者の気持ちを、人間という生き物はその立場にならなければわからない。誰もが皆、その理念の下に恐怖していた。ただ一人を除いて。
「佐伯さん、ハンドルお願いします」
 思わず、彼を見ずにいられない。一言も発しなかった少女でさえ、幽霊でも見るような眼差しで彼を見ていた。
「亮太、後ろにハンドガンを置いたな。取ってくれ」
「な、何する気だ?」
 付き合いの長い皆がわかっていた。彼の性格を、次に言い出す言葉を。
 無言で、射的屋から無断拝借したハンドガンを奪い取る。ひどく熱く怒りを堪えた眼差しが正面を射抜く。
「このままでいいのか? あんなのに、こんなところで殺されていいのかっ」
 理不尽な暴力。理不尽な権力。理不尽な理不尽な。それが許せない。怒りを堪えられない、それが彼。弱い者の気持ちがわかるとは言わない、それが可哀相だとも言わない。
 ただ、何様のつもりだと。偉そうに見下す、そんな存在が許せない。だから、
「自分勝手な都合で、殺されてたまるかっ!」