『今まで、お前が相手にしてきた連中とはわけが違う数の敵が、この先にいるんだ。お前一人が言って何になるというのだ?』
『みんなが、ちゃんと母艦に着くまで、作戦を立てるまでの時間稼ぎ、とか』
『馬鹿を言うな。たった一人で何が出来る? 生き残る事さえ、あそこでは困難だ』

 自信もなさそうに、だが悔しそうに俯いてしまった。
 強制ではないのだろうが、反抗を許さないという態度でゼムは帰還ルートに乗った。ダージュ、ヴァイフェと続き、その他の者が次々と去っていく。

『レナ、行こう。みんなが揃えば、何とかなるって。ひとりで無茶するなよ』
『……ごめんね、迷惑かけちゃって』
「気にしなくていい。それより運がよかった。ショウに会わなかったら、ここに来られなかっただろうから」
『ショウさんに、会ったんですか?』
「まあ。それでここまで来るよう、隊長たちに」

『「……!?」』

 暗闇を引き裂いた稲妻に、三人の肢体と思考が凍りついた。
 カサカサに乾いた唇が、震える声が詩絵瑠を呼び出した。