彼女が行くといえば喜んで行こう、だが自らが行くのと連れて行くのとは違う。
 自分の身ならばどうでもいい、と言うつもりはない。自己犠牲を尊ぶほど人間は出来ていない。
 気持ちの問題、ショウは弱くなった。
 それは関係が深まったからだ。
 自分のせいで誰かが傷ついてほしくない、自分のせいで誰かにつらい思いになってほしくない。
 臆病な思考。繊細であると言い換えられなくが、彼は自分を臆病と罵った。
 理由に見当もついていない、ただ怖かった。
 自分のせいで、誰かを失うという事が。
 詩絵瑠とは違う、レナとも違うだろう恐怖が纏わりつく。それは。

「とにかく、このままじゃ反撃もままならない」
「戦力が整い次第、頭の悪そうなあの人は総攻撃、とか言いそうだね」
「整わなくても言うだろう。気が長そうな奴じゃない」
「短気そうだね。けれど、何か良い手はある? 現状、打つ手はないように思えるけど」
「なくはないが、時間と人海戦術になる。出来る事をする、そのためには」
「今出来る事。反撃までに戦力を減らしすぎない?」
「今出来る事。人数を集めて対抗策を練る?」
「そう、まず頭数を集める。案が浮かべばそれを実行するだけの戦力が必要になるし、散り散りになっている味方を一箇所に集めておく必要がある」