F-21地区へと向かうには、巨大な橋を渡らなければならない。昔で言うベイブリッジ並みに大きい質素な鉄骨橋。群がる車は蟻の行列。不幸中の幸いが渋滞していない事。
「避難用の荷物を取りに帰らなかった事が、素早い避難に繋がったな」
「正直、この人数の荷物を取りに各家に回ると、絶対に間に合わないから」
「けどこの軍隊どこから来たんだ。見た事がないEXCASだけど」
「テロリストじゃないか。仮に裏で造られても、国が採用したらニュースになる」
「テロリストがこんな辺境なステーションをどうするんだ」
「秘密があるとか? 軍の機密事項とかで」
「まさか。隠しておかない秘密があるなら、もっと強力な軍事力を置くでしょう」
「ほら、ちゃんとカモフラージュしておくために、とか」
「本末転倒だ。結局見つかって、奪われたりしたら」
「雑談お楽しみのところ悪いが、捕まってないと舌噛むぞ」
 言ってショウが顎で差した。そこで黒いEXCASが二機打倒していた。一機は腕を切り落とされた直後にコクピットを貫かれ、一機はこの橋を拠点に旋回しつつ応戦している。
「それで守っているつもりか」
「無駄に戦火を広げているだけだわ」
 佐伯とランサーが罵った直後の事、その敵機がOSを粉砕した。
 ちっ、と苛立つショウ。ハンドルを切り、降り注ぐ破片から逃げ惑う。いくつかの車が同様に避け、奇跡的に被害はなかったが流れは止まってしまう。
 理由は、黒いEXCASが道の進行上に降り立ったため。