素晴らしい。
 そう言ったのは誰だったか。
 幹部の面々が集まり、一際大きなフレームの奥で老人が笑っていた。

 なす術もなく消えていくOS、艦隊さえも爆砕。
 施されたステルス処理の関係から、彼らが見ている光景は悪魔・Judgment(ジャッジメント)・LENA(レナ)のカメラ映像。
 リアルタイムで中継される、圧倒的な力の差。
 弱肉強食を越えた絵図を前に、同席していたガイアは愕然とする。
 彼らと同じ嬉々とした感情は浮かんでこない。当然、ついていけるわけはない。

「……これは、もう、戦争ではない」

 自然にそう漏れた言葉だった。
 それに反応したのは製作者以外のすべてから。

「戦争である必要はあるまい? 私たちが、勝てばいいのだから」
「その通り。目的を達するために、犠牲や敵の事など考えてはいられん」
「自ら戦線に赴き人を殺す君が、そんな事さえわかっていなかったのかね?」

 いつの時代か、確かにそんな考えを持つ者が出てきただろう。
 勝てばいい、当然の思考。
 相手を気遣えないのは、それが蹴落とすべき対象だから。
 しかし、それを躊躇しなくなったら人ではいられない。ガイアの考えは間違っているのか。
 間違いではなく、だが間違う者がいる。
 それが現実だった。
 間違いを犯した幹部たちは、それぞれ魅入って笑った。
 その中で、老人だけが違う。
 気付いたのか、誰にも悟られないずに。その表情を盗み見て、一瞬のうちに、凍りついた。