『やっと通じた。大丈夫? そっちは終わった?』
「……詩絵瑠か。こっちにもう敵はいない」
『そう、それはよかった』

 よかったと言うが、声は決して安堵していない。
 むしろ、焦燥。
 何かあったのか、と音声のみの相手に返す。
 戸惑った様子で言葉に詰まった。
 数秒ほど待ち、半ば予想外の言葉が返ってきた。

『鉱山進入口の部隊が、全滅したの』

 脳内に悪魔が過ぎた。
 植物を象った悪魔、エゴの塊、欲望のままに蠢く異体。

『他の人たちには報告したから。いま、周囲の部隊は撤退している。だから急いで』

 詩絵瑠の台詞を遮って、落雷に似た轟音が耳を劈いた。
 レナは心底驚いき、俺は当然のようにそれを受け止めた。
 これが来る、通信の前から理解していた。