上空をOSが編隊を組んで飛んでいく。すぐに敵を見つけたのか、急旋回して視界から消えた。
「佐伯さん、様子はどうですか」
「F-21の港に、まだいくつか避難船が残っているって」
「当てにならないだろ。実戦経験が薄い軍だし、見逃してくれるかどうか」
「行くのはいい案だと思う。少なくとも港に行けば、脱出ポットは残っているでしょう」
「みんなまとめて消えるより、そっちの方がよさそうだ」
「ランサー君、そんな縁起でもない事言わないで」
 佐伯が言うF-21の港は、フロンティア学院のある地区の最端区画。外部からの入港が目的ではなく、避難を優先した非常用宇宙船が置いてある港。賑やかな町並みの住宅区と違う。そこは既に廃墟とされ住んでいる者はいない。だが外見から称されているだけで、空気漏れも何もない。地区一つ分の大きさである、このような避難箇所がいくつもある。
 ショウが運転する車は規定速度ギリギリで進んでいた。スピード狂じみたドライブは、数分もなく通常運行になった。コツを掴んだと本人は言うが、何の予備知識のない若者がそう簡単に掴めない。だが疲れて花畑を見てきた乗客たちに、突っ込む気力はない。