折角自分らしい屁理屈を思いついたのに。
 折角自分らしくない誓いを立てたのに。
 それらはすべて崩れ去った。
 この、きれいな笑顔の御力で。

「俺、軍に協力して、二人を守って、あいつらを助けたい。だから、力を貸してくれ」
「いいですよ。わたしも、貴方一人につらい思いは、させられませんから」

 改めて、彼女の手を握った。
 こんなふうに、何度も諭される自分は情けないのだろうか。

 だが、それも悪くない。
 奇妙な感情と共に嬉しく思う自分が、ここにいた。
 悪くないんだ。暗い気持ちでいるよりも、正体がわからない居心地の良さを感じたい。
 本当の意味で、俺たちは、共に戦う事を決意した。
 同じ思いで、いてくれると信じて。

 また話が進む。
 二人がいるから、話が進む。
 例えまだ序章を抜けていないとしても、例えまだ序章が終わらなくとも。
 今この瞬間だけは、今この瞬間だけを大切にしたい。
 穏やかになれたこの気持ちを、不思議と暖かなこの気持ちを。
 戦う事を前に、しばし休憩しよう。
 この休憩を、大事に楽しく、過ごすとしよう。





END