瑠璃色の光が、鈍色の壁を突き破る。黒い空間から赤い色の瞳が覗く。
 ただし二つではなく、サングラスのような長方形型の瞳。人の物ではない、加工された物でもない、それは間違いなく瞳だった。機械の瞳。
 無機質なそれは、破れていく壁を無感動に眺めた。機械であるのなら、無感動は当然。だが適切ではない、一般人ならばよく知っただろう。
 人型をした機械には人格がある。もう百数年前からの常識だ。表の常識だ。
 表があるならば裏がある、このような存在がいるという事は何よりの証拠だ。人格が死んだ機械は、壁を壊していく。
 自らが通れるギリギリの穴。それを通って、いくつもいくつも、同じ影が行く。
 これから劇が始まる。