少し涙交じりに呟いた言葉を最後に

啓太は黙った―‥


その代わりをするように

千尋が優しく

「柚美はバカ素直なんだよ。

 真っ直ぐすぎ。
 

 傷つくだけって分かってて

 好きでいられるなら

 俺は応援するよ?

 いっぱい辛い想いして
 
 いい女になってこいや」と

2回ポンポンと私の頭に手を落とす。


『啓太‥

 心配してくれてるのは分かってる。
 
 大丈夫。私は大丈夫だから。

 
 千尋もありがとう。

 あんた達本気で大好きだよ』


「ほんっと言い出したら
 
 聞かねーな!好きにしろっ!」


プイッとへちを向き

やり切れない感情丸出しの顔に

セタメンをくわえ火を付ける。


啓太なりの反撃なのだろうか。

私が嫌いな香りと知ってか

今日は異常に吸う本数が多い気がする。


‥でも今日だけは

この苦手な香りに

啓太の優しさが混じっているようで。


あまり苦じゃなかった。


拗ねた啓太と

涙を堪える私を

横目で確認した千尋も


小さく微笑んで

安心したような表情を浮かべながら

赤マルを取り出し吸い始める。



いつまでも

こいつらとは

こういう関係で居たいな。