「晃に彼女が出来たんだよ」

唯一優しい口調で喋るみっちゃんが

持っていたビールの缶を

私の缶に近付けてきながら

私の隣に移動して来る。


私もその〝乾杯〟の合図に

応えるよう缶を近付けると

2つのアルミ缶同士が

お世辞にも「良い音」とは言えない

物足りないニブい音を出した。


『晃に?!良かったじゃん~

 おめでとう♪

 誰なの?どこの子?』


晃はこのメンバーで

1番真っ直ぐ恋愛をする奴。

根が凄い優しくて

人懐っこいから

誰からも好かれるし友達も多い。


その晃が照れながら

「美希菜だよ」と

立派な眉を下げながら言った。


『美希菜‥!?ミキナなの!?

 嘘ぉー!良かったじゃん!

 中2からだもんね!

 長かったね!

 本当に良かったー!』


美希菜《ミキナ》とは

晃が中学時代から

ずっと片想いしていた相手であり

私の友達。


女友達って関係は嫌いだけど

美希菜だけは信用してた。


美希菜には中学時代彼氏が居た。

もちろん相手は晃じゃない。


晃の気持ちは知っていたけど

親友である以上

美希菜の気持ちも

尊重してあげたかった。


本当は自分が隣に居たいはずなのに

それを笑って応援してる晃は

ずっとずっと痛々しかった。


だけど‥

やっと気持ちが伝わったんだ!


「3年間想ったのは無駄じゃなかったよ。

 大切にする!オレ頑張るわ!」

そう言って晃は残りのビールを

一気に飲み干し

満面の笑顔を私達に向けた。