自転車を押しながら、ゆっくりと歩く。 校庭は、部活の掛け声で溢れていた。 「彼方くん、ありがとうっ」 少し後ろを歩いていた彼女の唐突なお礼に、 俺は思わず振り返る。 「歓迎会、彼方くんがいてくれて嬉しかった!」 「……別に、HRだったし」 「でも、HRの前…苦手な数学だったのに、帰らないでいてくれたから」 いつもは帰る、数学の授業。 授業に参加しても、俺は結局寝てたけど。