健一は、生徒が行き交う廊下を縫うように走った。


ようやくたどり着いた教室に入ると、みんなが健一の方を注目した。


そんな視線が集まっていることも気にも留めずに、真っすぐに杏子の元へ近づく。

そして杏子の席の横で足を止めると、今まで溜めて来たものが一気に放たれた。


「お前は、黒谷に騙されてる!あいつには近づくな!」


一瞬、教室中が静まり返ったと思ったら、杏子はが立ち上がり、健一を睨み付けながら言った。


「黒谷くんの悪口を言わんといて!彼は私を助けてくれたんよ!・・・誰のせいで私が辛い目に遭ってると思ってるんよ!あんたこそ私に近付かんといてよ!」


杏子の言葉にさらに教室は静まり返った。


「わかったよ・・・」


健一は、目を閉じてうなだれ、教室を後にしようとした時、教室の入口に立っていた黒谷と目が合った。