次の日、健一は、いつも通り予鈴ぎりぎりに登校し、席に座った。


美穂からの視線が痛かったが、気づいていない振りをした。

席に着いた途端、佳祐が「ちょっと」と健一を引っ張って教室から連れ出した。


誰もいない渡り廊下でに着くと、壁にもたれかかり、佳祐はため息をついた。



「なあ、健一、美穂のことどうにかしてくれよ。機嫌が悪くてしかたがないんや」


佳祐が、健一に助けを求めるように言い放った。


「あぁ、すまん。なんとかする」


健一は、佳祐の目をしっかり見て宣言した。



―――うじうじ考えてばっかりいてもしかたがない・・・本人に聞くのが1番や!


昨日、考えた結果がこれだった。佳祐に宣言したことで、健一のなかで一枚壁が壊れてすっきりしたようにすっきりしていた。


昼休み、佳祐と学食で昼食を摂った後、ある人物を捜した。


「頑張って来いよ!」


佳祐も手を振って見送ってくれた。


―――あいつはどこにいるんや??


一旦、教室に戻り教室内を見渡す。


ぐるっと見渡したら、美穂と目が合った。


その瞬間、鬼に睨まれたかのように、背筋が凍る思いをした。


―――うわっ・・・怖っ!って俺が悪いんやな・・・。


美穂に睨まれたまま教室を後にし、階段を降りグランドの方へ向かった。


外ではサッカーをしている男子生徒がいたが、目当ての人物はいなかった。


―――あっ、明日って、球技大会やん。


急に思い出した行事に、健一は少し胸が痛んだ。


―――明日は嫌でもあいつと話さないといけないな・・・。


明日への不安を抱えたまま、屋上へと向かった。


屋上は誰も掃除をしないので汚い。

だから誰も寄り付かないので一人になりたい時にはちょうどいい。

健一は、とりあえず屋上へ行ってみることにした。


屋上への階段は昼休みで騒がしい教室などと本当に同じ建物なのか?というくらい、静まり返っている。


足音を立てていないつもりが、響くような気がした。


そっと、物音を立てずに、身を屈めながら、屋上への階段を上った。



―――俺、何してるんやろう・・・普通に歩いてもいいやん。


そう思い、健一が背筋を伸ばした瞬間、屋上から声が聞こえた。


「もういいやろ!」


その声は、俺が捜していた人物の声だった。


「何、言ってるんよ!あれで岡崎杏子を手に入れたつもり?」


―――この声・・・・・・


「俺は、彼女に眞中に近づかない方がいいって言って、彼女も認めてたから、もういいやろ!」


「でも、付き合ってないんやろ?」


「・・・それでも」


「せっかくあんなにいいシチュエーションを作ってあげたのに、無駄にするなんて、黒谷くんも相当鈍臭いんやね」



健一の耳に入って来たのは、捜し求めていた黒谷と、杉村の声だった。



―――黒谷のやつ・・・やっぱりお前は知ってたんやな!


健一は、無我夢中で、足音など全く気にせずに階段を駆け降りた。